アピール

日本政府はILO勧告を履行せよ!

  日本が戦時中に行った戦時慰安婦及び戦時産業強制労働がILO29号条約(1932年日本批准)に違反するとされる問題で、2005年3月に公表されたILO条約勧告適用専門家委員会の年次報告において再び取り上げられました。これは、5年連続となるもので、通常同一問題で個別の国を取り上げるのは2年ごととされている中で非常に異例のことです。
  条約勧告適用専門家委員会は今年の報告の中で、2001年報告を引きながら「当委員会は、以前に日本政府による過去の条約違反の被害者たちの高齢化に対する懸念とこの問題についての他の信頼すべき機関や人物によって公に表明された見解にもかかわらず、日本政府が被害者たちの期待に応えることができなかったことへの懸念を表明した。当委員会は、これらの被害者たちの要求に応えるために、日本政府が今後適切な方策を講ずることを望むと繰り返す。」との姿勢を改めて示しました。そして、「将来的にも報告書提出する際には、日本政府がそれにまだ最終的に決着がつかない事案や、これから提訴されるかもしれない事案についても通知し続けるように求める。」と今後もこの問題に継続的に関心を持ち続けることも明らかにしています。
  1995年に日本の大阪府特別英語教員組合(OFSET)が戦時慰安婦問題で初めてILOに申し立てを行ってから10年が経ちますが、日本政府は@戦時には29号条約の適用は除外されるAアジア女性基金や2国間条約で解決済みであるB50年以上も前の問題を取り上げる権限はILOにはない、等の主張を繰り返すだけでした。これらの日本政府の主張は、度重なる年次報告の中で条約勧告適用専門家委員会により斥けられてきたにも関わらず、10年間、日本政府は被害者の要求に応えて問題解決を図る努力を何一つ行っていません。そして、今、この瞬間にも、高齢の被害者が解決を見ることなく亡くなり続けているのです。
  条約勧告適用専門家委員会がこの問題に関心を持ちつづけているのには理由があります。それは、1930年に採択された29号条約がILOの最も重要な基本条約の一つであり、主要国の一つである日本の公然たる違反はILO設立の精神をも揺るがしかねないからです。また、29号条約を始めとした国際人道法違反には時効はないというのが国際社会の共通認識です。日本政府が専門家委員会の勧告を無視し続けることは、ILOそして国際社会への背信であり、日本には国連の常任理事国となる資格などありません。
  2005年は日本の敗戦から60周年となります。被害者にとってもはや残された時間はありません。私たちは、日本政府が一刻も早くILO条約勧告適用専門家委員会の勧告を履行し、被害者の納得のいく解決を図ることを求めます。

2005年4月

田中 宏(龍谷大学教授) 高橋 哲哉(東京大学教授) 土屋 公献(弁護士 元日弁連会長) 尾山 宏(中国人戦争被害者賠償請求裁判弁護団長) 荒井 信一(日本の戦争責任資料センター代表) 西野 瑠美子(VAWWnetJapan代表) 梁 澄子(下関裁判を生かす会)